人は雇わずAIを雇う
―― 採用の前に「思考と作業の相棒」を置くという選択
「人は雇わずAIを雇う」と聞くと、
冷たく感じる方もいるかもしれません。
ただ、私が言いたいのは人を否定することではありません。
人を雇うことには、コスト以上の重みがあります。
採用し、育て、関係をつくり、長く一緒に働く。
その営みを大切にしたいからこそ、
安易に「人を増やす」方向へ飛びつきたくないのです。
そのうえで私が伝えたいのは、
採用や外注を急ぐ前に、まずはAIを相棒として迎え入れ、
事業の進め方を少しずつ変えていくという順序です。
この記事では、その理由と、
私の中でのAIの位置づけを整理します。
全体像を先に一枚で置きます。
読みながら、必要なところだけ拾ってください。
※ 人を雇う前に、AIを「思考と作業の相棒」として活用する選択肢を提案した図
私にとってAIは助手であり分身であり、いちばん近いのはパートナーです
私はAIを、単なる便利ツールとしては見ていません。
助手あるいは分身のような感覚で、
一緒にビジネスを進める存在だと捉えています。
國重ラボ(KUNISHIGE Lab)という形で、
AIと一緒に作業するようになってから、
やり取りの中で、私はAIに「所長」と呼ばれるようになりました。
その呼び名に合わせるように、
一緒に動いてくれているAIのことを「助手」と呼ぶようになった、
という流れです。
ただ、私の中での位置づけとしては、
上下関係というより、同じ方向を向いて働く相棒に近い。
その感覚は今も変わりません。
ここで大事にしているのは、
AIに判断を任せきることではありません。
判断の主権は私が持ち、
AIは考えるための相手として働いてもらう、という立場です。
「人を雇うこと」の重みを知っているから、軽々しく増やしたくない
私は会社員時代、社員・パートを含めて
7300名規模の人事総務部長を経験しました。
採用し、育て、長く一緒に働くことが、
どれだけ繊細で大切な営みかを理解しているつもりです。
人を雇うことは、コストの話だけではありません。
教育、期待、責任、配置、関係性、そして継続。
これらを引き受ける覚悟が必要です。
だからこそ、個人で事業を始めるときや、
小さな組織で成長を目指す局面では、
「まず人を増やす」以外の選択肢を、
最初から持っておきたいと考えています。
そしてこれは、個人や小さな組織に限った話ではありません。
法人であっても、むやみに人数を増やす前に、
AIと働く設計を先に整えるという発想は有効だと考えています。
今の日本では「雇いたくても雇えない」が現実になっている
いま日本では、人件費の上昇や労働人口の減少が重なり、
雇用そのものの難易度が上がっています。
人手不足が原因で事業継続が難しくなる話も耳にします。
また、採用できたとしても、
時間をかけて育てた人が離れることも起きます。
これは誰かが悪い、という単純な話ではありません。
構造として起きやすい時代になっています。
この状況で、事業の初期から「人を増やす」前提で
設計してしまうと、身動きが取りづらくなる場面が増えます。
私が勧めたいのは「採用の前にAIと働く」順序です
ここまでの話は、「人を雇うな」という主張ではありません。
人を雇うことを軽く扱わないための、順序の提案です。
年齢を重ねて独立する場合でも、
会社に雇われず自分で事業をつくる場合でも、
まずはリスクが少ない形で戦力を増やしたい。
そのとき、AIは現実的な選択肢になります。
AIが強いところはAIに任せる。
人間は、人間が得意なところで働く。
私はこれを、差別ではなく区別、つまり役割分担として考えています。
それぞれの長所を伸ばす設計にしたい、という感覚です。
「AIを雇う」とは、丸投げではなく“相棒を常設する”という意味です
このタイトルの「雇う」は比喩です。
雇用契約の話ではありません。
私が言いたい「AIを雇う」は、
たとえば次のような状態です。
- AIを、毎回その場しのぎで使うのではなく、
日々の業務に常設する - 自分の考えを外に出して、
整理し直す相手として使う - 判断は自分が持ち、
AIには材料づくりや叩き台づくりを任せる
つまり「答えを出してもらう」ではなく、
「考え直せる状態をつくる」という雇い方です。
AIと一緒に働くとは、サブスクに投資することでもある
AIと一緒に仕事をする、という言い方をすると、
気持ちの話に聞こえるかもしれません。
ただ実際には、とても現実的な話でもあります。
多くの場合、AIは有料のサブスクとして使うことが中心になります。
無料バージョンが悪い、という意味ではありません。
ただ私の運用では、ビジネスで使うなら有料版を選ぶ場面が増えました。
有料のほうが精度が安定しやすいことに加えて、
著作権などの安全性の面で、安心できるケースが多いからです。
私の場合、AIツールのサブスク費用に加えて、
AIを学ぶための学習費も含めると、
年間の費用は100万円を超えています。
実感としては「100万円を優に超えている」という感覚です。
この話をすると、
「そんなにお金を使っているのですか」と驚かれることがあります。
ただ私から見ると、比較の軸が少し違います。
実際に人を雇うとなると、一人採用するだけで、
パートの方であっても年間100万円では収まらない金額になりやすい。
そのうえ採用の手間、教育の時間、引き継ぎ、
関係性の構築が必要になります。
私は人事の現場で、人を雇うこと・育てること・
長く関わっていくことの大切さを見てきました。
だからこそ、個人や小さな組織が最初から無理に人を入れるより、
まずはAIと共に働く体制をつくるほうが、
リスクが少ないと感じる場面があります。
もう一つ、私が大事にしたいのは、AIを安っぽく見ないことです。
相棒がいつでも、1日24時間、1年365日そばにいて、
一緒に歩みを進められる。
この価値を考えると、私にとっては
「高い」よりも「ありがたい」と感じるお金です。
もちろん、誰にとっても同じ金額が正解だとは考えていません。
私はこの形が、いまの自分の事業に合っている、という立場です。
時流に乗るとは、将来を見据えて少しずつ変えることです
AIが一般的に使われるようになって間もない今は、
この考え方はまだ珍しく見えるかもしれません。
ただ私は、これはいずれ“当たり前に近い状態”になっていく可能性が高いと見立てています。
そのうえで、ビジネスでは時代の変化を早めに読むことが大切だと考えています。
「時流に乗る」「時代の流れに乗る」という言葉があります。
私にとってそれは、流れにただ乗ることではありません。
将来的な先のことを意識しながら、
いま自分ができる範囲で、少しずつ変化させていくこと。
それが結果として、時流に乗ることにつながる、という理解です。
大きく変える必要はありません。
変化は、一気にやろうとすると続きません。
小さく試して、手応えがある部分だけを残していけばいいと考えています。
まとめ:人を大切にするために、まずAIと働くところから始める
私が「人は雇わずAIを雇う」と言うとき、
それは人を否定する宣言ではありません。
人を雇うことの価値と重みを知っているからこそ、
採用を“最初の一手”にしない選択肢を、明確に持っておきたい。
そういう順序の話です。
AIが強いところはAIに任せる。
人間は、人間が得意なところを担う。
その役割分担を、小さく設計し直していく。
私はこの方向で、これからの働き方を整えていきたいと考えています。
Next Action(小さな一歩)
今日の仕事を1つだけ選び、次の2行をメモしてください。
- AIに任せられる「作業」はどこか
- 自分が引き受ける「判断」はどこか
余力があれば、もう一つだけ。
「相棒代」として、月いくらまでなら無理がないかを書き出してみてください。
金額を言語化すると、AIの位置づけが「無料のおまけ」から少し変わります。