個人ブランディングをするという選択
―― AIで「作ること」が簡単になった時代に、最後に残る問い
AIを学ぶ方が、ここ数年で一気に増えました。
学べる場所も、教えてくれる人も、驚くほど増えています。
そのうちに、こう感じる瞬間が出てくるかもしれません。
「同じような内容を、いろんな人が発信している」
「結局、どこで学べばいいのか、分からなくなってきた」
発信する側に立っている方なら、逆の悩みかもしれません。
「自分と同じことを言っている人が、どんどん増えている」
「どう差別化すればいいのか、分からない」
本記事では、この両方の立場の方に向けて、「誰から学ぶか」と「誰から学ばれるか」を同じ線の上で整理してみます。
合言葉は、ひとつだけです。
作ることが簡単になった時代に残るのは、「認知」と「つながり」である。
※ 「作る」のハードルが下がる一方で、「認知・信頼」の価値が上がる、という全体図
AIによって「作ること」のハードルは劇的に下がった
まず、前提を置かせてください。
AIが広がったことで、文章、資料、画像、動画、コード。これらを「作る」ハードルは、かなり下がりました。
以前なら何日もかかっていた作業が、短時間で一定の形になります。
これは、学習者にとっても、発信者にとっても、大きな変化です。
ただし、全員にとって同じように便利な状況は、同時に別のことを意味します。
「同じようなもの」が、世の中に一気に増える。
そうなると、次に問われるのは「作れるかどうか」ではなくなります。
問われるのは、こちらです。
誰が発信しているか。誰に頼みたいか。誰から学びたいか。
「誰から学ぶか」で、同じ内容でも結果が変わる
ここからは、私の経験です。
私は長年働いてきた会社を辞めたあと、独立して安定して食べていける基盤を作ることができました。
その基盤を教えてくれた人が、一人います。
日本で出会ったカナダ人で、Nigelという方です。
彼から学んだことの中で、今でも私の土台になっているのは、ツールの使い方そのものではありません。
物事の抽象度を上げて、「何をやっているのか」を整理してくれたこと。
これが一番大きかったと考えています。
Nigelの教え方は「ツールの話」から始まらなかった
例えば、私がPhotoshopを学んでいたときのことです。
普通であれば、ボタンの位置や、機能の使い方から教わると思います。
Nigelの教え方は、少し違いました。
最初に、こう整理してくれました。
- あなたは今、デザインを学んでいる
- なぜデザインが必要なのか
- そのデザインで、何をやろうとしているのか
この順番で、私の頭の中を整えてくれたのです。
そのうえで、こう続きます。
「だから今、Photoshopという道具が必要になる」
「その中で、この機能はこう使う」
このように、目的から道具へと降りてくる教え方でした。
同じ内容でも、教える人が変わると「次のビジョン」が変わる
一方で、別の方からツールを教わったこともあります。
そのときは、ツールの使い方そのものは覚えられました。
ただ、応用が利きませんでした。
なぜそれを使うのか。その先に何があるのか。その部分が、自分の中に残らなかったのです。
結果として、同じ「Photoshopを学ぶ」という行為でも、学び終えたあとに見えている景色が、まったく違っていました。
ここで誤解してほしくないのは、これは「教える人だけの問題」ではない、ということです。
教わる側の姿勢にも、影響はあります。
ただ、それでも、自分が「この人から学びたい」と感じられる人に学ぶことは、想像以上に大きな差になると、私は経験から考えています。
「誰から学びたいか」が、そのまま「個人ブランディング」につながる
ここで、話を逆側から見てみます。
もしあなたが発信する側にいるなら、同じ問いが返ってきます。
「誰から学びたいか」を決めるのは、読者や受講者の側である。
つまり、発信者である私たちにできるのは、「選んでもらえる状態」を、日々の行動で少しずつ作っていくことです。
私はこれを「個人ブランディング」と呼んでいます。
ここで言う個人ブランディングは、自分を大きく見せることではありません。
誠実に関わり続けた結果として、「この人から学びたい」と感じてもらえる状態を作ることです。
※ 人間が責任を持ってAI成果物を評価・活用するための、最終プロセスの漫画風図解。
「作る」が簡単になるほど、「認知」と「つながり」の価値が上がる
AIによって「作ること」が簡単になった分、差別化は難しくなっています。
そのとき、最後に残るのは、こちらだと私は考えています。
- 誰が発信しているか(認知)
- 誰に頼みたいか(信頼)
- 誰から学びたいか(つながり)
この3つは、AIで短時間に作れるものではありません。
時間と、積み重ねと、誠実さが必要です。
逆に言えば、ここは「時間をかけた人ほど強くなる領域」でもあります。
私が実際に積み重ねてきた「認知」と「つながり」
ここも、私の経験の話です。
私は今、いくつかの場所で継続的に活動しています。
どれも「営業」ではなく、「関わり続けること」から始まったものです。
1: 生成AIの学校「飛翔」での公認管理人としての活動
日本で3万人以上の方が学ばれている、生成AIの学校「飛翔」で、公認管理人としてZoom交流会のホストやサポートを続けています。
これはボランティア活動です。
報酬のための活動ではありませんが、管理人として関わり続けることで、認知とつながりが自然に深まっていきました。
2: 國重リアルセミナー/國重Zoomセミナー
東京や福岡などでリアルセミナーを開催し、実績を積んだあとに、Zoomセミナーへと広げました。
参加された方から「教え方が分かりやすい」というお言葉を、たくさんいただけるようになりました。
3: ブログの継続発信
当初は「AI×Notion」というタイトルで、2年以上ブログを配信してきました。
当時はツール紹介が多かったのですが、変化の激しい時代に「流行り廃りのツール紹介」だけでは残らない、と考えるようになりました。
そこで、同じURLのまま「KUNISHIGE Lab」へと名前を変えて、AIに関する考え方を中心に発信しています。
この記事も、その延長線上にあります。
4: オンラインサロン「AI効率課」
飛翔の公認管理人仲間と一緒に、「AI効率課」というオンラインサロンを運営しています。
50名を超える方が参加されており、毎週オンラインのウェビナーや交流の時間を設けています。
5: コンサルティング
こちらから営業したわけではありませんが、NPO法人、一般法人、個人事業主のオーナー様から、コンサルのご依頼をいただくようになりました。
共通していたのは、リアルで私を知ってくださっている方々からの依頼だった、という点です。
「営業しなくても届く」は、積み重ねの結果にすぎない
ここで強調しておきたいことがあります。
これらは「営業をしなかったから届いた」のではありません。
関わり続けたから、届いた。
そう整理するのが、一番正確だと考えています。
ボランティアでの管理人活動。セミナーの積み重ね。ブログの継続。サロンでの毎週の発信。
どれも、短期間で成果が見える活動ではありません。
ただ、数年単位で続けていくと、ある時期から「向こうから声がかかる」ことが少しずつ増えていきます。
これが、私の経験から見えている「認知」と「つながり」の実像です。
まとめ:スキルは土台。その上に「誰から」が乗る
ここまでを、短くまとめます。
- AIによって、「作ること」のハードルは劇的に下がった
- そのぶん、「同じようなもの」が世の中に増えていく
- 最後に残るのは「誰から学ぶか」「誰に頼みたいか」という問い
- 学ぶ側として大切なのは、「この人から学びたい」と感じられる人を選ぶこと
- 発信する側として大切なのは、誠実に関わり続けて「選んでもらえる状態」を作ること
スキルを学ぶことは、今も変わらず重要です。
ただ、スキルは「土台」です。
その上に、「誰から学ぶか」「誰から学ばれるか」という層が乗ります。
この上の層は、AIでは代替できません。
時間をかけて、人と関わり続けた人にだけ、少しずつ積み上がっていくものだと、私は考えています。
※ 個人ブランディングをするという選択のまとめ図解
Next Action:今日からできる「小さな一歩」
最後に、今日から試せる小さな一歩を置いておきます。
どれか1つだけで大丈夫です。
学ぶ側の方へ
- 今学んでいる分野で、「この人の発信は他と何が違うのか」を1人だけ選んで、言葉にしてみる
- その人の発信を、ツール単位ではなく「考え方」で受け取ってみる
発信する側の方へ
- 今日の発信を、「ツールの紹介」ではなく「なぜそれをやっているのか」から書き直してみる
- 営業ではなく、「関わり続けられる場所」を1つだけ選んで、小さく関わり始める
無理のない範囲で、少しずつで構いません。
「作ること」が簡単になった時代だからこそ、時間をかけてしか積み上がらないものに、少しだけ目を向けてみてください。
私は、その積み重ねの先に、「この人から学びたい」と感じてもらえる状態が、自然と立ち上がってくると考えています。