Notionは、なぜ一度失敗する必要があったのか

―― 創業者アイバンとサイモンが信じ続けた思想

Notionは、いまや
全世界で1億人以上に使われるツールになりました。

フォーチュン500企業の半数以上が利用し、
AI時代の中核ツールとして語られる存在です。


ただ、その出発点は、
決して順風満帆なスタートアップ物語ではありませんでした。


この記事では、
Notionの共同創業者である
アイバン・ザオサイモン・ラストの2人に焦点を当てながら、


  • なぜNotionは、一度ほとんど失敗する必要があったのか
  • それでも、彼らが手放さなかったものは何だったのか
  • その思想は、どのようにプロダクトへ残されたのか

を、
創業から京都での立て直し、そしてNotion1.0の誕生までに絞って整理します。


これは、成功の理由を解説する記事ではありません。
思想が、まだ形になりきっていなかった頃の話です。


創業者2人が最初に描いていた世界

Notionは2013年、
創業者のアイバン・ザオとサイモン・ラストによって立ち上げられました。


2人がNotionを創業したとき、
そこには明確なミッションがありました。


「誰もが思い描いたソフトウェアを自由自在に組み立てて、
世界がより多くを実現できるようにすること」


彼らが目指していたのは、
メモアプリやドキュメントツールではありません。

ソフトウェアを作れる人と、作れない人の差をなくすこと
そのための、ノーコードの世界でした。


思想としては、非常に一貫しています。

ただ問題は、
この思想が、あまりにも早すぎたことでした。


「正しい思想」が届かなかった理由

創業直後のNotionは、
このミッションを、
できるだけ純粋な形で実装しようとしました。


しかし現実には、いくつもの壁がありました。


  • 多くの人は、そもそもソフトウェアを作りたいと思っていなかった
  • コンセプトが抽象的で、価値が伝わりにくかった
  • 技術的にも不安定で、頻繁にクラッシュしていた

結果として、Notionは使われませんでした。


ここで重要なのは、
ミッションや思想が間違っていたわけではないという点です。

思想と、
人がそれを受け取る準備との間に、
大きな距離があった。


創業から2年が経った2015年、
Notionは 倒産寸前 まで追い込まれます。


京都への移動は「撤退」ではなかった

この状況で、創業者2人は大きな決断をします。


  • 従業員を全員解雇
  • サンフランシスコのオフィスを撤退
  • 日本・京都へ移住

資金は、
ザオ氏の母親から借りた15万ドルのみでした。


京都への移動は、
ビジネス的に見れば合理的とは言えません。

ただし、
立ち止まって考え直すための場所としては、
非常に象徴的な選択でした。


ここで2人が向き合っていたのは、
「どうやって成功するか」ではありません。


「このミッションは、
どうすれば人に届く形になるのか」


という問いでした。


「砂糖でコーティングしたブロッコリー」

京都での時間の中で、
アイバン・ザオはある比喩に行き着きます。

それが、
「砂糖でコーティングしたブロッコリー」
という考え方です。


  • 誰もがソフトウェアを作れる世界は、栄養価の高いブロッコリー
  • しかし、それをいきなり出しても、誰も手に取らない
  • まずは、甘くて食べやすい形にする必要がある

ここで彼らは、
思想を引っ込める決断をします。

正確には、
思想を捨てたのではなく、棚に置いた


人が自然に手を伸ばす入口として選ばれたのが、
メモとドキュメントでした。


※ Notionが失敗を経て思想の順序を組み替え、Notion1.0へ至るまでを一枚で示した図解です。


シンプルさは、創業者の性格の表れだった

Notionを初めて触ったとき、
多くの人が感じるのは
「静かさ」かもしれません。


派手な演出はなく、
何をすべきかを強く主張してこない。

この佇まいは、
偶然生まれたものではありません。


創業者のアイバン・ザオは、
デザインや素材、手触りといった
感覚的な質をとても大切にする人物です。


流行や装飾よりも、
長く使われるかどうかを基準に判断する。

その美意識が、
Notionの余白や、
シンプルな画面構成にそのまま反映されています。


一方で、
その抽象的な思想を
現実のプロダクトとして成立させてきたのが、
共同創業者のサイモン・ラストでした。


サイモンは、
前に出て語るタイプではありません。

ただ、
それが毎日使えるかどうか
という視点で、静かに形にしていく。


この2人の組み合わせがあったからこそ、
Notionは
主張しすぎない道具になりました。


Notion1.0は「完成形」ではなかった

こうして生まれたのが、
2016年に公開されたNotion1.0です。


それは、
誰もがソフトウェアを作れる世界の完成形ではありません。

ただし、
そこへ向かうための、最初の足場でした。


  • 書ける
  • 並べられる
  • 組み替えられる

一見するとシンプルな操作の中に、
「組み立てる」という思想だけが、
静かに残されていました。


Notion1.0は、
思想を語りません。

ただ、
使い続ける人だけが、少しずつ気づく構造をしています。


レゴブロックは、思想の最小単位だった

Notion1.0で特徴的だったのが、
「レゴブロック」と呼ばれる設計です。


テキスト、見出し、画像、リスト、
さらにはデータベースまで。

Notionでは、
それらがすべて
同じ「ブロック」として扱われます。


これは、単なるUIの工夫ではありません。

創業時に掲げていた
「誰もが、思い描いたものを組み立てられる世界」
というミッションを、
最も小さな単位まで分解した結果でした。


プログラミングの代わりに、
ブロックを並べ替える。

その行為自体が、
「組み立てる」という思想の
最初の実装だったと整理できます。


まとめ:Notionは、思想を急がなかった

Notionは、一度失敗しました。

しかしそれは、
ミッションを誤ったからではありません。


  • 人が受け取れる順序を誤ったこと
  • 思想を、完成形のまま出そうとしたこと

その反省から、
彼らは遠回りを選びました。


便利さの中に、思想を隠す。
完成ではなく、足場としてのプロダクトを作る。


Notion1.0は、
その判断の結果です。


もしNotionに、
どこか余白や、育てる感覚を覚えるとしたら、
それは最初から
完成させるつもりがなかった道具だからかもしれません。


このミッションが、
この先どのように実装されていくのか。


それは、次の話です。



参考・出典について

本記事は、Notion創業者のインタビューや公式資料、
および複数の海外テックメディアで公開されている情報をもとに、
思想や判断の流れを整理・再構成したものです。

主な参照先は以下の通りです。

國重公秀

飲食業界で31年、現場から役員までを経験し、売上16億円から300億円への企業成長を牽引。現在はその経営視点と最新技術を掛け合わせ、「AI×Notion」に特化した生成AIコンサルタントとして活動しています。

中小企業や飲食店オーナー様の業務自動化と収益化を支援しつつ、自身も「1日3時間の労働で安定収益を上げる」ライフスタイルを実践中。

(James Skinner氏に師事(AI Super Human)/プロンプトスクール飛翔 元公認管理人/東大「AI経営講座」修了・生成AIパスポート 他)

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