インフォグラフィックとグラレコの違い
―― 目的から逆算する、図解の選び方
図で「インフォグラフィック」や「グラレコ」という言葉を
よく聞くことがあります。
一方で、実際のところ、この違いが分からないまま、
同じように考えて使っている方もいらっしゃいます。
この違いを整理してお伝えすると、
「なるほど、そうだったのか」と腑に落ちる方が少なくありません。
この記事では、まずインフォグラフィックとグラレコの違いを整理します。
その上で、私が有効だと考えている
「ハイブリッド(構造×タッチ)」という考え方も紹介します。
さらに今回は、マインドマップを重要な土台として扱います。
なぜなら、「図」と「テキスト」を併せて使うと、
思い出す手がかりが増えやすい、という発想が
ここに強く現れているからです。
ただし、どれを使うかは当然、読者の判断です。
この記事は、私の考えを押し付けるためのものではなく、
選ぶための材料を増やすための整理として書きます。
まずは全体像を、1枚の図で俯瞰します。
細部は、このあと文章で順にほどいていきます。
※ 目的から逆算して、グラレコ・インフォ・ハイブリッドの使い分けを1枚で整理した 「ハイブリッド」の図解です。
目的から逆算すると、図解は選びやすくなる
図解の種類が増えるほど、方法論の名前が先に立ちやすくなります。
「グラレコっぽく描く」
「インフォっぽく整える」
ですが、図解は本来、目的のための手段です。
だからこそ、最初に見るべきなのは
「どの表現が正しいか」ではなく、
「何のために描くのか」です。
ここからは、目的の違いがそのまま表現の違いとして現れる、
という順番で整理します。
グラレコは「プロセス」と「熱量」を扱う
グラフィックレコーディング(グラレコ)は、
会議やワークショップなどのライブな場で、
話を聞きながら内容をリアルタイムに描き起こす手法です。
イラスト・図形・キーワード・矢印を使って、
議論の流れをその場で「見える形」にしていきます。
特徴は、完成された図を事前に作り込むことではありません。
進行に同期しながら描く「即興性」にあります。
描く場所も、ホワイトボードのような物理的な板書だけではなく、
共有画面などのデジタル上でも行われます。
その場にいる人が「いま何が話されているか」を
同じ地図として見られることが、グラレコの価値になります。
ここは図で見ると、意味合いが掴みやすくなります。
※ グラレコの「場の記録」の雰囲気を示す参考画像です(内容は本記事と異なります)
グラレコでは、話題同士のつながりが見えるように、
要点を近くに配置したり、矢印で関係を結んだりします。
その結果、議論が広がっても
「いまどの話をしているのか」
「どこから来た話なのか」
を追いやすくなります。
流れの見せ方にも型があります。
たとえば、次のような整理です。
- タイムライン型:時系列で矢印をつなぎ、進行の流れを追えるようにする
- 吹き出し型:発言者ごとにまとめ、視点の違いが分かるようにする
- 発散型:アイデアを広げ、関連や派生を見える形にする
言い換えるなら、グラレコは「結論」よりも「道筋」を扱います。
話がどう展開し、どこで認識が揃い、どこで分岐したか。
そのプロセスと場の温度感まで含めて可視化することで、
参加者が全体像を共有しやすくなります。
インフォグラフィックは「確定情報」を正確に届ける
インフォグラフィックは、確定した情報やデータを、
読み手に分かりやすく伝えるための編集デザインです。
図形やグリッド、レイアウトの規則性を使って、
情報の関係を整理し、誤解が起きにくい形に整えます。
インフォグラフィックが得意なのは、ライブ感の再現ではありません。
誰が見ても同じ理解に到達しやすい
「再現性のある伝達」です。
たとえば、手順、比較、因果、全体構造など、
「読み手が迷わないように道を敷く」ことが中心になります。
言い換えるなら、インフォグラフィックは
「道筋」よりも「結果」を扱います。
だから、後から参照される資料にしたいときや、
不特定多数に向けて正確に届けたいときに向いています。
マインドマップは「記憶術」から生まれた図解の系譜でもある
ここで、マインドマップを少し厚めに扱います。
私はこの話が、今回のテーマにとって重要だと考えています。
マインドマップは、イギリスの教育者・著述家である
トニー・ブザン(Tony Buzan)が考案した手法として紹介されています。
また、その開発は1960年代に始まり、
1970年前後に現在の形として普及していった、
と説明されることが多いです。
当初は「記憶術」として生まれ、
自然な脳の思考プロセス(連想の流れ)を視覚化したノート法、
という位置づけで語られます。
※ マインドマップの特徴を示す参考図です(本記事の内容を要約したものではありません)
マインドマップは、図や文章を組み合わせることで、
右脳と左脳の両方を活性化しやすく、
情報の記憶定着を後押しするとされています。
この視覚的なアプローチにより、
学習内容が記憶に残りやすくなる感覚を持つ人も多いです。
日本では2006年頃から注目を集め、
その頃から私自身もトニー・ブザンの考え方に影響され、
カラーペンを使いながらマインドマップを書いていました。
使いどころは特別な場面に限りません。
新規事業の企画、問題点の把握、
結婚式のスピーチのまとめなど、
頭の中が散らかりやすいテーマほど助けられた感覚があります。
私の経験では、マインドマップは「正しい答えを出す」ためというより、
考えをほどいて並べ直し、
次に何を考えるかを見つけるための道具として
機能しやすいと考えています。
ここから私が今回の議論に接続したいのは、次の点です。
文字だけで追うよりも、図やイメージがあるほうが、
思い出すための手がかりが増えやすい、ということです。
この「手がかりが増える」という考え方は、
インフォグラフィックやグラレコ、
そして私が勧めたいハイブリッドを選ぶときにも、
判断材料になります。
違いをひと言でまとめると「プロセス」か「結果」か
ここまでの話を、なるべく短くすると次の整理になります。
- グラレコ:対話の流れや熱量など「プロセス」を扱う
- インフォグラフィック:確定情報を整理して「結果」を届ける
もちろん、現実には境界がはっきりしないこともあります。
ただ、混同が起きやすいのは、
目的の違いが見えないまま「見た目」だけで選んでしまうからです。
ここで大事なのは、どちらが上かではありません。
「自分はいま、何を達成したいのか」を先に置くことです。
だから「ハイブリッド(構造×タッチ)」が効く場面がある
ここからが、私の立場です。
私は、状況によっては
「インフォグラフィックの構造」と
「グラレコ風のタッチ」を掛け合わせた表現が
有効だと考えています。
私はこれを「ハイブリッド」と呼んでいます。
インフォグラフィックのように情報の流れを構造化しつつ、
グラレコのような柔らかいタッチで、
読み手が身構えにくい雰囲気をつくる考え方です。
私がここで意識しているのは、図の形(中央から広がる、など)ではありません。
むしろ、「構造(整理されたテキスト)」と
「イメージ(図・イラスト)」が同時にあることです。
マインドマップが「記憶術」や「思考の可視化」と結びついて
語られてきた背景を踏まえると、
図と言葉を併せることで、思い出すための手がかりが増える、
という見立ては自然です。
つまり私は、
グラレコでよく使われるイラストの「親しみやすさ」と、
インフォグラフィックの「整理されたテキスト(構造)」を組み合わせることで、
図を見たときに内容を思い出す手がかりが増えやすいと考えています。
このハイブリッドが効きやすいのは、次のような場面です。
- 論理的に整理したいが、硬い図だと距離ができる
- 正確に伝えたいが、読まれないと意味がない
- 全体像を示したいが、要点だけだと納得感が出にくい
「構造」は理解を助けます。
同時に、「親しみやすさ」は読み始める心理的負担を下げます。
両方が揃うことで、正確さと読みやすさを同時に取りにいける場面があります。
私は、その現実的な落としどころとして、
ハイブリッドをおすすめできると考えています。
ただし、ここで挙げた特徴はあくまで傾向です。
目的や状況によって最適解は変わります。
まとめ:図解は「目的」で選ぶと迷いにくい
インフォグラフィックとグラレコは、似て見えて、得意分野が違います。
- グラレコ:プロセスと熱量を扱う
- インフォグラフィック:確定情報を正確に届ける
そして、マインドマップは、記憶術や思考の可視化という文脈で
育ってきた手法として紹介されています。
その背景は、「図と言葉を併せると、思い出す手がかりが増える」
という見立てを補強してくれます。
この違いが見えると、「どれが正解か」ではなく、
「自分の目的にはどれが合うか」で考えやすくなります。
ここまでの整理を、最後に1枚へ圧縮します。
必要なときに、ここだけ見返せる形にしておきます。
※ 本記事の内容をまとめたインフォグラフィック図です
次の小さな一歩(Next Action)として、
最近のメモや議事録を1つだけ選び、
最初の1分で「目的」を言葉にしてみてください。
- これは「場の流れを共有したい」のか
- それとも「確定情報を残したい」のか
- あるいは「見返して思い出したい」のか
目的が決まると、表現(グラレコ/インフォ/ハイブリッド)も
選びやすくなります。
議事録のような文字情報を、後から見返せる図解に変換するときに、
このハイブリッドが効きます。